自分でなく、昔勤めてた職場の同僚の話ですが。
当時いた部署は百人以上いる大所帯で、その中でさらに十数名ずつのチームに分かれてた。
その一つにちょっとしたシステム管理を請け負ってるチームがあったのな。
普段は職場全体で使ってるシステムの維持とか管理とかしてるけど、他のチームの依頼に応じてデータ処理や作成、集計とかもやってた。
で、そのチーム(便宜上、システム班とでも呼ぶが)に、Aという男がいた。
こいつはシステム班でも唯一、特殊な技術(ITとかプログラム関連の資格・技術と思ってくれ)を持ってて、そのおかげで大抵の依頼に引っ張りだこだった。
傍から見てもかなり大変ではあったようだ。一つの依頼を片づけてもすぐさま別の依頼が舞い込んでくる、みたいな感じで。
それだけなら素直に同情するし尊敬もするんだが、このAという男、とにかく陰険で性格が悪いことでも有名だった。
他のチームが何か依頼するごとに
「どうしてこんなこともできないんですかぁ?」といったり、仕事しながらぶちぶちと
「あの能無し・・・・」と延々呟いてたり。
その癖、課長とか部長には媚を売り、自分がいかに健気に頑張っているかをアピールしてたんで、上司連中には可愛がられてたが同僚間の評判は最悪に近かった。
かように、Aはいかに自分が大変で休む間もないかを上司に訴え続けていたんだが、あるとき入社二年目だか三年目だかの社員(以下、B君)を部下に付けられた。
Aは嬉々としてB君にいくつもの仕事を押し付け始めた。
とはいえ、業務を教育する際にも
「何でこんなこともわからないんだ」
「説明なんていらない、見ればわかるだろ」みたいな感じで、B君はかなり苦労したらしい。
だが、B君はかなりの努力家だった。何を言われても文句ひとつ言わず、仕事を覚えていった。
Aと同じ技術持ちだったが、能力的にどちらが優れていたかは俺にはわからない。
ただ、B君は性格的に明るく愛想よく、そのくせ真面目、熱心かつ素直で、何より人の悪口を言わない青年だった。本当に俺より年下かよと思うくらい人間が出来てた。
同じくらいの能力なら、誰だって気分よく依頼を受けてくれる方に行くわな。
ほどなくして、それまでAに依頼されていた仕事はほぼすべてB君に行くようになった。
というか、今までAにぶちぶちいわれるのが嫌で極力依頼を控えてた連中も、B君には遠慮なく依頼をかけるようになっていた。かくいう俺もそうだった。
どう見ても往時のA以上の仕事を押しつけられてるように見えたが、それでもB君は依頼されるごとに
「了解です!」と元気よく笑顔で応じ、すべてこなしてた。
何こいつ野郎のくせに可愛いじゃねぇか、うちのチームに欲しいぜ、と何度も思ったのは秘密。
気がつけば、Aに依頼をかける・・・・というか、話しかけるのは、以前から奴を可愛がっていた一部の上司連中のみになっていた。
システム班にいた知人に聞いたところでは、普段やることがなく、ちまちまネットサーフィンしてたとか。
会社で大規模な業務再編があった
さて、そんな状態が半年ほども続いたあるとき、会社で大規模な業務再編があった。
うちの部署も、上長が異動したりしてきたり、いくつかの業務が廃止されたり新たに付け加わったりでかなり混乱した。
人員配置の変更やチームの統廃合もかなりあったんだが、システム班でも所属社員の担当業務がいくつか変わったらしい。
で、誰かが意図したのかどうかはわからんが、Aに割り当てられるべき仕事が綺麗に空白になってたとか。要は干されてたのな。
上司の一人に
「何で僕にシステム管理を任せてくれないんですか」と食ってかかってたAの姿はよく覚えてる。ほとんど半泣きに近かったような。
B君はというと、Aの部下という配置から外れ、システム班のエース格として相変わらず多くの仕事を任されてた。
さらに数ヵ月後の人事異動で、Aは正式に他の部署へ飛ばされてた。
「何で俺が!?」と叫んでたらしい。
後日、先輩社員に聞いたことだが、Aは昔からあの性格のおかげで顧客と接する業務はまったくダメ、行く先々の部署の同僚からも軒並み嫌われまくっていたとか。
で、一念発起してIT・プログラム関係の勉強をして、システム班での地位を築いたんだと。
以後は自分を嫌っていた周囲への欝憤を晴らすかの如く、ふんぞりかえるような態度で仕事をしていた模様。
ちっとは同情してやるべきなのか、根本的に性根がひん曲がってる奴は例えスキルがあっても弾かれるというべきなのか。
とりあえず、Aにどれほどぞんざいに扱われ続けても
「Aさんも大変みたいですし、仕事を教えてくれた人ですので」と決して悪口を言うことはなかった――
しかし、結果としてその能力と人格だけでAを排除してしまったB君は、ある意味恐るべき傑物だった。
ネットの反応
単にAの自業自得のような…。
Bくんすごいね。過労死しない?
>>主です。
>>356
うん、書いててそれは俺も思った。
だが、少し前まで偉そうにしてたAが徐々に暇そうにぼけっとデスクについてて、その横で若いB君がひっきりなしにかかる内線や上司の呼び出しにバリバリ対応してる姿は、残酷なほど対照的でありつつ素晴らしくスカッとしたんで。
ちなみに、一度B君に
「大丈夫か」みたいなことを訊いてみたんだが、
「死にそうですが何とかなります」とあっけらかんとしてた。
Aが偉そうにいいつつ手を抜いてたのか、B君が優秀だったせいか、多分両方だったんだろうけど。
社会人として一番真っ当な蹴落とし方だよな
本人にその気があったかは分からんけど
B君カッコいい、見習おう
>
「死にそうですが何とかなります」
これを
「大丈夫」と解釈してスカッとする能天気さが怖いわ
しっかし、個人に過剰な負荷を押し付けるすごい会社だな
B君以外全員無能やんけ
これだけ気を使える子が
「死にそうですが」って正直に言うって相当だよね
一人だけに過度な負荷をかける体制を、誰もおかしいと思わない、ブラック企業ここにありだなw
まとめから来たけど、50コメくらいついてて全員が
「あなたの会社は異常」で意見が一致しててワロタ
結局自分が嫌な仕事(Aさんに仕事を頼むという仕事)をしたくなくてB君に甘えてるだけだよね。
新人にあまえてんなよなー社会人ならよお
Bが過労でヤバい << Aが干されてスカッ
異常だよ、あんたの会社の連中は
あんたもだけどな
笑顔で応じる子が
「死にそう」つーてるんだぞ?
なぜそれがSOSと気づかないかな
「死にそう」より
「何とかなる」のほうを重視しちゃうのか…
まあ、こういう無自覚ブラック企業体質の人は自分(達)に都合のいいことしか見ない聞かないものだから
「死にそう」のほうはBくんのジョーク程度にしか受け止めてないんだろうね
昔の会社って書いてあるし、今ここでアレコレ言ってもどうにもならんのだろうけど
>>主です。
B君の負担についていわれると、正直返す言葉がない。
当のB君が
「頼られたら全力で応じるのは当たり前」みたいな感じで嫌がりもしなければ手抜きもしないんで俺を含め皆良くも悪くも頼りまくってた。
で、依頼が集中しまくった頃、部署内の班長の一人が部署の朝礼の場で
「B君に仕事依頼しすぎ」と部署内社員全体に注意してたよ。
システム班の班長も、B君の負担を下げようと努力はしてたらしい。班の本来の仕事であるシステム管理を極力他の班員で回そうとしたとか。
このあたりについては所属が違ったのでさすがに詳しくは知らんが、B君の仕事量は一時期のピークを過ぎるとそれなりに落ち着きはしたようだ。
ただ、嫌な話になるが、その会社の企業風土(?)として営業偏重・技術者軽視みたいな点はたしかにあった。
部署内でB君に世話になった各チームの社員や班長、直属の管理職はもちろんB君を評価してたが、会社側がそれをどう受け取るかは別問題だったのな。
具体的に言うと、技術面での功績が昇進に関わる査定にあまり影響しないという。
平社員としてはそれなりに昇給したようだけど、残念ながらB君は昇進はしてなかった。
で、数年後に会社が早期退職を募集した際、B君はこれに応じて退職した(俺もこのとき辞めた)。
辞める前には他の人間でも簡単に使えるプログラム(?)とマニュアルを作って後任者に引き継いでたらしい。
課長や部長が面談して慰留に努めたと聞くが、丁重に謝絶したんだと。
後日、元同僚と飲んだとき、B君はあれから新しい勤め先もあっさり決まり、相変らずバリバリやってると聞いた。
彼を逃した会社は馬鹿だとは思うし、彼ならどこでも重宝されるだろうとも思う。
コメント