わたしがホテルでの披露宴などの宴会でアルバイトをしていた時の出来事です。
6月は最も披露宴の数が多く、常に時間に追われ慌ただしい中で準備や片付けが行われていました。
ホテルの社員以外はほとんどが学生のアルバイトで、私もその中の一人として一生懸命働いていました。
私が社員から受けた指示
一件目の婚礼が始まり、臨機応変な対応や質の高いサービスが求められるなかでも次に行われる二件目の婚礼の準備も少しずつ始めなければなりません。
それに加え新人のアルバイトへの指導なども同時進行で動くのは本当に頭を使います。
そのような中で私は一人の男性社員にテーブルを全て一人で片付けておくようにと指示を受けました。
その男性社員は一番と言っていいほど、みんなから嫌われている存在でした。
その男性社員が私に頼んだテーブルの場所に行ってみると、その発言に呆れてしまいました。
一人で動かすなんて到底できるわけがない量と大きさのテーブルの山でした…。
意地としてやりきろうとして…
何台もある自分よりも大きなテーブルを片付けるように頼まれた私は、怒りを通り越してやってやるという気持ちで一つずつ片付けようと動きました。
一人でできるはずがない仕事を頼んだあの男性社員にぎゃふんと言わせてやろうと思ったからです。
しかし、大量のテーブルは私の力ではすぐに片付くはずがありませんでした。
それでも一人でテーブルと戦っていた私に一人の女性社員が声をかけてくれました。
「一人でこれをやろうとしているの?」
「はい…」
「誰かに頼まれたの?」
「あの男性社員に言われました」
そう会話を交わした後、その女性社員が男性社員を連れてきました。
私はハッとしました。
その女性社員は、男性社員が最も頭を上げることのできない存在の社員だったのです。
女性社員は男性社員にこう言いました。
「あなたがこのテーブルを一人で片付けなさい。それが嫌なら彼女に謝りなさい。それだけじゃない、彼女のこの働きをあなたはもっと見習いなさい」
男性社員は私に
「悪かった…」とだけ言って拗ねた顔をしながら汗だくになってテーブルを片付けていました。
その様子を見て女性社員は、
「アホは人間の言うことは聞かなくていいのよ、私のような大人の背中を見なさい」と言い、こんなかっこいい女性になりたいと心から思い、尊敬する上司となりました。
あとがき
この体験を通して、自分のことを見てくれている人はいるのだなと強く思いました。
私もこれから無茶なことを頼まれている人などを見かけたら、指示をした本人も呼んで助けてあげられる大人になりたいと思いました。
コメント