大学の創作文芸サークルに所属している。
創作は基本的に年一回、学祭で発行する同人誌用に書くだけで、あとの期間は週1冊皆で同じ本を読み、皆で書評を言い合うのが慣例だ。
そのサークルにAという奴が入ってきた。
Aは自称
「読み巧者」で、自分じゃ毒舌の切れがいいと思っている典型的なタイプ。
週1回のお題として出された本を必ずくそみそに貶す。
しかもろくに読んでいない。
「2ページ読んでやめた。時間の無駄」
「冒頭からして意味不明。クズ本」
「あらすじで読む気をなくした」
「女作者というだけでゴミ決定」
「読む価値なし」
「読むべき本に漂っているオーラがない」
「タイトルとペンネームが糞。中身も推してしかるべし」
つねにこんな感じ。
口癖は
「知識が増えない本は紙と時間の無駄」。
うちのサークルは創作を兼ねており、読むのも書くのも小説が中心だ。
小説は知識を増やすための実用的なものではなく、娯楽であり文化であり、むしろ実用性・現実性を要しないものだというのがサークルの総意。
部長がそれをAに話し
「知識のみを求めるならうちのサークルと合わないのではないか」と提言したがAは辞めなかった。
ちなみにAが
「お題」として出してくるお薦め本はミステリばかりだった。
ミステリは薀蓄が多く、知識が増えるのでいいんだそうだ。
ある時Bが、Aの好きなミステリ作家の最新刊をお題にした。
翌週の書評会で、皆が感想を言い合っているとAが切れた。
興奮してなにを言っているかよくわからなかったが、要約すると
「ネタバレするな」ということらしかった。
しかしその場にいる皆は、お題の本を読みきっているのが前提で集まっている。
Aの抗議はまとはずれだ。
「まだ読んでないなら帰れ」と言うが、Aは帰らず最後までブツブツ言っていた。
次の時も同じく人気ミステリ作家の最新刊にした。
やはりAは
「ネタバレするな氏ね」と大騒ぎした。
それでわかったこと。
Aは読むのが遅かった。1冊読むのに最低でも三ヶ月かかるらしい。
週1冊は彼のペースではとても無理だった。
そしてミステリのようなはっきりした解決のある話でないと、理解できない(曖昧な心理描写が苦手で意味が読みとれない)ため、エンタメ以外の文学作品も無理だった。
なので書評がいつも
「読んでない。読むだけ無駄」という貶しだった。
しかし自称
「読み巧者」としてはペースが合わせられないとは言えなかった。
サークル脱退もプライドに関わるためできなかった。
そんなサークル活動でなにが楽しいんだ?と疑問だったが
「サークルに入ってないとぼっちだと思われる」とAは言い張った。
その後も書評会はAの言う
「ネタバレ」ばかりが連続したため、Aはサークルに来なくなった。
卒業まで籍はあったが、当然創作もしなかった。
2年もすると
「創作文芸サークル」でなくすっかり
「ミス研」になってしまったが、Aは来なくなったし、部員も増えたのでよしとする。
ネットの反応
平均的な読解力もないクセに、何でわざわざ文芸サークル選んで入ったんだろう…
アホならアホなりに、欺瞞に走らず等身大で楽しめるサークルに入れば良かったのにね。
それが出来るならアホなんてやっとらん分けですよ。
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