高校三年生の夏、同級のAが唖然とした顔で自転車置き場に突っ立ってた。
「オレの自転車がない!?」
俺は
「さ〜知らないな?」と通り過ぎそうになったが、続いて歩いてきたBが
「アレじゃね?」と指した方向。
なんと体育館の屋根の上に自転車が。
Bの指す方向を見て、さらにそのあとから来たCが爆笑。
いやいや笑ってる場合じゃないのよん。
俺とABCはどうやって自転車を下ろそうかと相談し、まずBが生徒立ち入り禁止場所に張られているバリケードの虎ロープをほどいて持ってきた。
柔道部でデブのAと俺がスクラム組む形で並びしゃがむ。
長身だが痩せてるBが俺らの肩の上に乗ってしゃがむ。
チビで身軽なCが虎ロープを肩にかけ、Bの肩の上に乗って立つ。
「立つぞ!」とBがゆっくりと俺らデブスクラムの肩の上で立ち上がる。
B
「届いたか?」
C
「まだまだ、あと1メートルくらい」
今度は俺らデブスクラムが
「せーのっ」と立ち上がり始める。
最上段のCが
「OK届いた!」と叫んだ。
Cは屋根の上に手をかけて登ったのだろう、急に肩が軽くなった。
Bが俺らの肩から飛び降りて、三人で上を見た。
Cは自転車にロープをかけてゆっくりと下し始める。
自転車よりもまずお前が落ちるなよ!ってみんなで声をかけた。
こうして自転車は無事にAの元へと帰ったが、今度はCが降りられない。
Bの提案でCはロープを体に巻き付け、梁のようなところにロープをかけた。
俺とABの三人でゆっくりとロープを緩めながら、滑車の要領でCを少しずつ下した。
「ロープが食い込む! 痛ぇ痛ぇ!!」と騒ぐC。
すでに数人の教師や大勢のやじ馬が集まっていたが、みんな爆笑。
こうしてCも無事に地面に降り立ったところで一人の教師
「倉庫に梯子あったのに」先に言えよ役立たずが!! 俺らの連携を最後まで見物したかったらしかった。
Aは神妙な顔で俺ら三人に何度も礼を言った。
卒業式の時、俺ら四人は表彰を受ける。
代表はC。
ただしこの事件とは無関係で、全員三年間無遅刻無欠席無早退だったからだ。
自転車を体育館の屋根にあげたのは同級の三人組で、倉庫の梯子を使ったのだそうだ。
しっかり野次馬の中にいて、事件解決後に白状しやがった。
まあ、そんなCも今は俺等の奥さんです。
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