私は独身時代、某携帯ショップで働いていました。
その頃はガラケー全盛期で、防水機能のついた携帯はほとんどなく、水に濡れると蓋をあけたところなどにある水濡れ確認シールの印が滲むという仕組みになっていました。
精密機器なのでやはりお水には弱く、少し濡れるだけでも故障してしまうことがありました。
水に濡れた機器は中の基盤が腐食していることが多く、シールを確認して水に濡れたという事実があれば、私たちはメーカーに修理に出すことすらできませんでした。
ほとんどの方は、その水濡れ確認シールの滲みを見せると納得してくれました。
水に濡れたという自覚があるからだと思います。
なかには水に濡らした覚えがない!という方もいらっしゃり、ほんの少しの滲みなら『お客様が水に濡らした覚えがないと言っている』ということでダメ元で修理に出すことも稀にありました。
でも、こんな方もいらっしゃいました。
5歳くらいの男の子を連れた30代くらいの奥様でした。
何もしていないのに、急に携帯の電源が入らなくなってしまったと。
中には子供の写真がいっぱい入っているのにどうしてくれるんだ!と大変ご立腹でした。
そう、もしこのまま携帯の電源が入らないと中のデータを吸い出すこともできなかったのです。
たぶん経験したことがありご存知だったのでしょう。
私は診断を始めました。
まずは電源ボタンを押してみます。
やはり電源が入りません。
充電がうまくできていない可能性もあるので、充電器を差そうと差し込み口の蓋をあけました。
するとそこにある水濡れ確認シールが滲みを通り越して真っ白になっていました。
水などに濡らした覚えはないか聞くと『私が水に濡らす訳がないでしょう!』と激昂。
しかし、これは絶対に水濡れです。
そこで横に座っていた男の子が一言。
『お母さん、昨日ビールこぼしてたよ。携帯びちゃびちゃだったよ。』
奥様のお顔は真っ赤に。
『ビールは水じゃないのよ!もう!行くわよ!』とそそくさと帰って行かれました。
息子くん、ありがとう!!
子供の前で嘘ばダメですよね(笑)
コメント