小学校が古い木造校舎でトイレが汲み取り式だった。
たくさんの個室に仕切られた横に細長い建物になっていて奥の空間が昼でも暗くて臭くて不気味。
冬の薄暗い夕暮れ下校時に我慢できなくてトイレに行った。
誰もいなくて怖かったけど、なるべく照明に近く入り口からは見えない個室を選んで速攻用を足し、出ようとしてたら出入り口から女子二人が小声でなにか話しながら入ってくる気配。
向こうが個室に入ったら出ようと待機した。
少ししても個室に入る気配がないので出ようとしたら、すっごく恐る恐る
「はーなこさーん」と呼びかけてきた。
ああ、低学年の子が怪談を検証しに来たのだなと思い、なるべくかすれた甲高いささやき調で
「はーあーーいーー」と返事して差し上げたら、ギャーッという悲鳴とともに走り去っていった。
小学生の私は学校の怪談ってこうやって伝承されていくのだな、いい仕事したぜと、ほのぼのした気持ちで家への帰路に着いた。
大人になった今では
「怪談に便乗して申し訳なかった」と思う。
名も知らぬ少女たちよ、ごめんね。
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